2025.06.10
2025年5月29日から31日にかけて、東京国際フォーラムにて開催された World Physiotherapy Congress 2025 に参加いたしました。まず、オープニングセッションでは、World Physiotherapy の会長である Michel Landry 先生および日本理学療法士協会会長の斎藤先生よりご挨拶がありました。さらに、日本文化を紹介するイベントも催され、本学会は華やかに幕を開けました。
学会のセッションでは、Education、Musculoskeletal、Neurology、Health Promotion、Older People、Women’s Health など、国内の学会でもおなじみのテーマに加えて、HIV and Palliative Care や Innovative Technology: Information Management, Big Data and AI といった、国内ではあまり見られない興味深いトピックも多数取り上げられており、大変印象的でした。
演題の傾向としては、日本人の発表には観察研究が多く、特に下肢に関する研究が目立ちました。一方で、世界的には腰痛に関する研究が多く、高齢社会という共通点を持ちながらも、国や地域によって直面する課題が異なるという印象を受けました。また、東南アジアや中国からはランダム化比較試験(RCT)による介入研究が数多く報告されており、インドでは統計モデルを用いた予測研究が多いという傾向が見られました。さらに、オーストラリアやスウェーデンなど、理学療法士に開業権が認められている国々からは、理学療法士によるダイレクトアクセスの医療経済的有効性や鑑別診断に関する演題が多く発表されていました。一方、戦時下にあるイスラエルからは、負傷した兵士を理学療法士がいかに効果的に軍へ復帰させるかという研究が報告されており、各国・地域の社会的・政治的背景が研究テーマに大きく影響していることを改めて実感しました。
私自身のポスター発表には、イギリス、ドイツ、チリ、台湾の研究者や学生から質問をいただき、非常に活発な意見交換を行うことができました。西太平洋地域やアジアの学会では、欧州や南米の研究者と交流する機会は限られていますが、今回の World Physiotherapy Congress 2025 では、世界中の多様な研究者と直接交流できたことが大きな収穫となりました。そして、クロージングセッションでは再び Michel Landry 先生よりご挨拶があり、次回の World Physiotherapy Congress 2027 がメキシコで開催されることが発表されました。最後には、メキシコ文化を紹介するイベントが行われ、盛会のうちに学会は閉幕しました。
今回の参加を通じて、世界各地が抱える課題の違いや、人種・地域によって異なる文化や研究の特色、そしてそれらをコミュニケーションによって理解し合える可能性について、深く学ぶことができました。このような貴重な機会をいただけたことに、関係者の皆さまに心より感謝申し上げます。
宝塚医療大学和歌山保健学部
理学療法学専攻 伊藤 秀幸
5月29~31日に東京で開催されたWorld Physiotherapy Congress 2025に参加しました。World Physiotherapyは、世界の理学療法の発展と健康増進を目的に活動しており、発展途上国やPTが少ない国に対しても、PT先進国と同等の質の高いサービスが提供されるよう支援しています。シンポジウムや教育講演では、各国のPTの現状や課題について知ることができました。保険制度や地理的条件によりPTへのアクセスが制限されるケースもあり、テレヘルス(遠隔医療)の活用や半監視下での運動指導、ハンズオンからハンズオフへの移行、セルフマネージメント支援の推進など、さまざまな工夫がされていました。日本では医師の処方なしにPT診療を行う「ダイレクトアクセス」の制度はありませんが、PTへのアクセス環境は非常に充実していると感じました。一方で、今後は効果の乏しい介入が保険診療から淘汰されていく可能性が高く、日々の臨床において、いかに効率よく患者さんの状態を改善できるか、そしてその効果を客観的に示していくことが、日本の理学療法における重要な課題であると感じました。
初日のウェルカムパーティーでは屋台が並び、食べ飲み放題でした(写真)。海外のPTや日本のPTの猛者たちと交流できる、とても楽しい機会となりました。2027年はメキシコ開催です。ぜひご参加をご検討ください。
和歌山県立医科大学附属病院紀北分院 峯玉 賢和
このたび、和歌山県理学療法士協会の温かい声援を賜り、2025年5月29日から31日に東京国際フォーラムで開催された「World Physiotherapy Congress 2025(WPT2025)」に参加させていただきました。世界理学療法連盟(World Physiotherapy)が主催するこの国際学会は、世界中の理学療法士が一堂に会し、臨床・教育・研究の最前線について学び合う場です。日本での開催は1999年の横浜大会以来26年ぶりであり、まさに歴史的な大会でした。今回のWPT2025は、5,000名を超える参加者、3,355の抄録投稿、2,640名の演題発表者、120名のボランティアが集う過去最大規模の開催となり、国際理学療法界の活気と多様性を肌で感じることができました。
私はこの大会で、1日目にポスターセッションにて発表を行いました。演題は「Dose-response of Sarcopenia and Frailty on Step Count in Older Pneumonia Patients(高齢肺炎患者におけるサルコペニア・フレイル重複合併と入院中の歩数との関連)」であり、高齢者の身体活動に関する研究成果を海外の参加者に英語で伝えるという、これまでにない挑戦となりました。準備段階から発表当日まで、言語面の不安もありましたが、いざ対面で説明を始めると、拙い英語でも真剣に耳を傾けてくれる参加者の姿に励まされ、自分の研究をしっかり伝えようという気持ちが強まりました。また、2日目と3日目には、ボランティアとして学会運営にも携わりました。2日目は海外からの参加者を対象とした地域施設の見学同行支援を担当し、千代田区内の高齢者向け健康・福祉施設を訪問しました。香港、シンガポール、フィンランドなど多様な国からの9名の理学療法士とともに日本の地域包括ケアシステムや介護保険制度について意見を交わすことができ、国境を超えた学び合いの場の力を実感しました。3日目はポスター会場の案内係として来場者対応を行い、世界中から集まる理学療法士たちの熱量に触れる時間となりました。
今回の参加を通して、国際学会が決して遠い存在ではなく、「参加してこそ見えるもの」「話してこそ伝わること」がたくさんあると気づかされました。私自身、韓国籍の日本理学療法士としてこれまでも国際交流に関わってきましたが、現地で直接ふれあうことでしか得られない気づきの多さに、あらためて国際的視野の重要性を痛感しました。特に若手の理学療法士や学生の皆さんには、早い段階から国際学会や海外との接点を持つことをおすすめしたいと思います。語学力や発表経験の有無に関係なく、「学びたい」「伝えたい」という想いがあれば、世界とつながることは十分に可能です。今回の経験は、私にとって単なる発表や学びにとどまらず、理学療法士としての姿勢を問い直す契機となりました。
このような貴重な体験の機会をくださった県士会の皆様に、心より感謝申し上げます。
和歌山リハビリテーション専門職大学
健康科学部 リハビリテーション学科
理学療法学専攻 禹 炫在
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